。」

「わ、びっくりした」

穴から顔をのぞかせた喜八郎に、は軽く飛び跳ねた。
気配でいるのはわかっても、突然目の前に現われたら、やはり驚く。
苦笑しながら、喜八郎の視線に合わせてしゃがみこむ。

「いつも思うんだけど、よく私だってわかるね。」

「だって、だから。」

それだけ言うと、喜八郎はまた穴を掘りはじめた。
はしばらくその様子を見ていたが、軽く伸びをしながら立ち上がる。
立ち去ろうとしていると判断しのだろう、喜八郎が動きを止めて顔を上げた。

「やらない?」

「やらない。」

喜八郎はをじっと見つめ、瞬きを2、3回すると、穴からはい上がってきた。
そのまま隣まで来ると、の手を引いて腰を下ろす。
されるがままにも座り込むと、喜八郎の装束の埃を軽く払う。

「もー、またこんなに汚して…喜八郎の彼女になる子は、大変ね。」

、大変なの? 」

「いや、私じゃなくて、彼女のこと。」

「僕は、が好き。」

「…へ?」

表情も変えずにそう告げた喜八郎。
あまりに突然のことに、は事態が飲み込めずにただ唖然とする。
そんなの方を見るでもなく、喜八郎は続ける。

が好き。一緒にタコ壼掘るのが一番楽しいけど、いてくれればいい。は大変じゃないんでしょ?じゃあが彼女になってよ。」

淡々と、それでいて心の底から零れてくる…そう感じられる言葉。
その姿を見つめるしかできないと、喜八郎の視線がようやくぶつかった。
瞬間赤く染まったの顔…答えは探すまでもない。

「…しょうがないなあ。」

言い終わると同時に喜八郎は立ち上がり、微笑むを抱き上げて穴に飛び込んだ。
喜八郎に自然と零れた笑顔は、今まで見たこともないほど、幸せに満ち溢れていた。



    心の底から、零れ落ちるもの

                        優しく、深奥に沁み込んでいく

 

  [3 stories]様に捧げます。
あまりお題が生かせずに申し訳ありません…。
素敵企画に参加させていただき、ありがとうございました!
最後までご拝読くださった貴女様も、ありがとうございました!!

2011.11.11 綾
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